パウロの航海と難破
神様が「これが道だ、これに歩め」と行くべき道を随時示してくだされば良いのだが、すぐに示していただけないことがある。そのような時、祈りながら心の中では「どうしようか?」と方策を考えることがよくある。完全に無の状態から神様に祈り求めるべきなのに、祈りながら自分の考えた行動をとろうとする。今朝読んでいた書物にもそのようなことが書かれていた。パウロの言う通りではなく自己判断で出航したことで航海が困難になった時のことである。
嵐は一晩中吹きすさび、用心したにもかかわらず、船は浸水した。「次 の日に、人々は積荷を捨てはじめ」た。夜になっても、風は衰えなかっ た。嵐に打たれた船は、マストが折れ、帆が裂けて、荒れ狂う疾風の猛 威であちこちへ振り回された。嵐に打たれて船がよろめき揺れるたびに、 うなるような音を立てている柱やけたなどは、くだけてしまいそうであ った。浸水はす早くひろがり、船客や船員たちはポンプにつききりで働 いた。船の中の人々はみな一刻の休みすらなかった。「3日目には、船具 までも、てずから投げすてた。幾日ものあいだ、太陽も星も見えず、暴 風は激しく吹きすさぶので、わたしたちの助かる最後の望みもなくなっ た」とルカは書いている。
14日間、彼らは太陽も星もない空の下をただよった。使徒パウロは、 自分自身肉体的に苦しみながらも、暗黒の時に望みの言葉を語り、危急 のたびに助けの手をさしのべた。彼は信仰によって、無限の力であられ る神のみ腕にすがり、心は神に支えられた。自分自身のために心配する ことはなかった。ローマでキリストの真理のあかしをするために、神が生かして下さることを知っていた。しかしパウロは、罪深く、堕落して、死の準備もできていない周囲のあわれな魂を切に思いやる気持ちになっ た。彼らの生命を助けてくださるように熱心に祈った時、彼の祈りがき かれたことを示された。
患難から栄光へ電子版p339 航海と難破
嵐が静まって
嵐が静まったので、パウロは甲板に立ち上がって言った。「『皆さん、 あなたがたが、わたしの忠告を聞きいれて、クレテから出なかったら、 このような危害や損失を被らなくてすんだはずであった。だが、この際、 お勧めする。元気を出しなさい。舟が失われるだけで、あなたがたの中 で生命を失うものは、ひとりもいないであろう。昨夜、わたしが仕え、 また拝んでいる神からの御使が、わたしのそばに立って言った、「パウロ よ、恐れるな。あなたは必ずカイザルの前に立たなければならない。た しかに神は、あなたと同船の者を、ことごとくあなたに賜わっている」。 だから、皆さん、元気を出しなさい。万事はわたしに告げられたとおり に成って行くと、わたしは、神かけて信じている。われわれは、どこか の島に打ちあげられるに相違ない』」。
患難から栄光へ電子版p339 航海と難破
失敗地点から
神様は、一度でも御心に従わなかったら「もう祝福するのはやめた。あとは自分の力で何とかしなさい」と人間を見捨てることはなさらない。勿論時間的な制限はあるが、神様は誤った道の途上で悔い改めるならば、そこから祝福の道に転じてくださる。というか、失敗だと思った道さえも祝福の道に変えることがおできになる。
前述のパウロを乗せた船であるが、マルタ島に漂着した。ここでは島民からの手厚い保護を受けた。非常に良好な人間関係を構築することができ、この島に滞在することで多くの人々に福音を述べ伝えることができた。もしも難破しなかったら、マルタ島伝道はもう少し遅いタイミングで始まったのかも知れない。
3か月のあいだ船の同乗者たちはマルタ島に滞在したが、パウロと彼 の共労者たちはその間、幾度も機会を捕らえて福音を説いた。主はすば らしい方法で彼らに働きかけられた。パウロのために、難破船の同乗者 たち全員が手厚くもてなされ、彼らの必要なものはみな支給されて、マ ルタを出発する時には、航海に必要なものがことごとく惜しみなく用意 されたのである。この島に滞在中の主な出来事は、ルカによって次のよ うに簡潔に述べられている。
「さて、その場所の近くに、島の首長、ポプリオという人の所有地が あった。彼は、そこにわたしたちを招待して、3日のあいだ親切にもて なしてくれた。たまたま、ポプリオの父が赤痢をわずらい、高熱で床に ついていた。そこでパウロは、その人のところにはいって行って祈り、 手を彼の上においていやしてやった。このことがあってから、ほかに病 気をしている島の人たちが、ぞくぞくとやってきて、みないやされた。 彼らはわたしたちを非常に尊敬し、出帆の時には、必要な品々を持って きてくれた」。
患難から栄光へ電子版p342 航海と難破
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