懐の深さ、心の広さ

フランツ・リスト

音楽を知らない私が語るのもおかしな話であるが。フランツ・リストという音楽家がいた。ハンガリーに1811年に誕生し、ドイツ、オーストリアなどヨーロッパ各地において活躍した音楽家である。作曲家でもあるリストは交響詩の父とも言われる創始者的存在であった。オラトリオ「聖エリーザベトの伝説」「キリスト」、「荘厳ミサ曲」「ハンガリー戴冠ミサ曲」「十字架の道」など有名な曲を世に排出したことでも有名である。

演奏家としてのリストの方が或いは有名なのかもしれない。人並外れた大きな手を活かした技法は本人さえも演奏中に失神したという逸話が残るほどである。12度或いは13度指が届くという、1オクターブがやっと届く小生にはまったくもって羨ましい存在である。ハンガリー語を習得することはなかったリストだが生涯ハンガリー人であることに誇りを持っていたともいわれている。非常にハンサムで彼の音楽はもちろんのこと彼の外見に惹かれる聴衆も多かったという。そのようなリストにひとつの逸話が残されている。

リストの弟子

ハンガリーの小さな村でそれは起こった。

ある修道院でピアノの演奏会が開かれることになった。ピアノの演奏は父親に先立たれ、病気の母親を支えるべく修道院で生活している少女であった。偶然にもその村を訪れていたリストが宿泊先のホテルで彼女の演奏会にチラシを目にする。そこには少女自身のことを「リストの弟子」とうたっていた。リストは自分の弟子を思い出しながらもハンガリーの少女を弟子にしたことがないので不思議に思った。ホテルのフロントにこの少女のことを訪ねた。小さな村であるためホテルでも少女のことはよく知っていた。早速彼女が住んでいる修道院を教えると、すぐにリストは修道院に少女を訪ねる。憧れの、そして自分が嘘をついて名前を借りているリスト本人が目の前にいることで動転する少女だったが気を取り直して全てを正直に話した。自分が貧しい生活のために残された才能であるピアノを弾くことでお金を得ていること、自分には何のネームバリューもないためリストの弟子などと嘘をついていること、そして全ての嘘がバレてしまった以上今回の演奏会を中止することを。

しばらく考えていたリストが「今から私の宿泊しているホテルに行きましょう」と言って宿泊先に案内しそのロビーにあったアップライトピアノで今晩の演奏曲を弾くように促した。演奏の所々でリストは「もう少しこう弾いた方が良い」「ここはフォルテで」などと細かい指示を出した。彼女もそれに応え素晴らしいレッスンの時間となった。小一時間のレッスンの後リストは彼女に向かって「これであなたは正真正銘私の弟子です。心置きなく私の名前を使って構いません」と言った。そしてその晩の演奏会で彼女は今まで以上に力を発揮しリストの指示通りの演奏をした。更に、演奏会の最後に「特別出演」として何とリスト本人がステージに現れた。「今日は私の弟子のコンサートに来てくださりありがとうございます」と礼を述べ最後の曲としてリスト自身が演奏した。

何とも心温まる話である。

心の広さ、懐の深さをもう一度考えさせられるエピソードであった。

共同相続人

リストとは状況が違うが、イエスキリストも私たちとの関係性について述べておられる。

わたしがあなたがたを愛したように、互いに愛し合いなさい。これがわたしの掟である。 友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない。わたしの命じることを行うならば、あなたがたはわたしの友である。もはや、わたしはあなたがたを僕とは呼ばない。僕は主人が何をしているか知らないからである。わたしはあなたがたを友と呼ぶ。父から聞いたことをすべてあなたがたに知らせたからである。あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、また、わたしの名によって父に願うものは何でも与えられるようにと、わたしがあなたがたを任命したのである。互いに愛し合いなさい。これがわたしの命令である。」
ヨハネによる福音書15:12-17

イエスは自分のことを「僕(しもべ)」ではなく「友」と認めてくださる。そして神の国、天の父の御国を受け継ぐ「共同相続人」にまでしてくださった。恐れ多いことである。勿体無いことである。イエス様の方からこの関係を築いてくださったので次のように言うことができる。

この大祭司は、わたしたちの弱さを思いやることのできないようなかたではない。罪は犯されなかったが、すべてのことについて、わたしたちと同じように試錬に会われたのである。だから、わたしたちは、あわれみを受け、また、恵みにあずかって時機を得た助けを受けるために、はばかることなく恵みの御座に近づこうではないか。
ヘブル人への手紙4:15,16

2021年12月11日 安息日礼拝〈ライブ〉

(メッセージは58:32から)

宜しければこちらのクリックもお願いいたします
↓↓↓↓↓↓↓

にほんブログ村 哲学・思想ブログ キリスト教へ
にほんブログ村

にほんブログ村 教育ブログへ
にほんブログ村

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA