現在訳あって一人暮らしをしている。誰とも話すことなく一日が過ぎて行く。日課は聖書の勉強と祈り、そしてジムで汗をかくこと。冷蔵庫が無いので毎日翌日の食材をだけを買って帰る。今日もそうだった。
23時を回ってはいたがスーパーの店内にはまだ若干のお客さんがいた。はじめは気にしていなかったけどずっと聞こえる子どもの泣き声。段々気になり出し買い物を中断して泣き声のする方へ近づいてみた。食品コーナーからかなり離れた化粧品コーナーで母親と思しき女性と小学3年生ぐらいの男の子がいた。男の子は何かを買って欲しいわけでは無さそうだがお母さんと一緒に帰りたく無いようで「帰りたく無い」と泣き叫んでいた。買い物カートには男の子のものと思われるランドセルが乗せられていた。そもそも休前日でも無いのに小学生がこの時間にスーパーにいること自体少し見慣れない光景だしランドセルがあると言う事はこの子は下校してからこの時間まで家に帰っていない事になる。急に胸騒ぎがして女性を時々睨みながらこの二人から離れないようにしていた。数名の買い物客も何か異様な雰囲気を感じたのか付かず離れずの距離を保っていたが私はもっと露骨に近づいた。余程男の子に声をかけようとしたがこの女性のなんとも言えない不自然さに圧倒されただついて行くことしかできなかった。私の執拗な尾行を振り切るかのように二人は店外に出て行ってしまった。
こういう時どういう対応をすれば良かったのだろうと今も悩んでいる。男の子を見てまず思ったのが「虐待」だった。この子がそういう被害を受けていないことをただただ祈るばかりである。今まで山奥の田舎に住んでおり会う人も顔見知りばかりなのでそのような場面を見た事は一度もなかったが街中で一人暮らしをするようになってから、お母さんから思いっきり叩かれている子どもを何度も見かけた。先週も歩道を歩いている時に向こうから小学1年生ぐらいの男の子とお母さんらしい女性が仲良さそうに手を繋いでこちらに向かっていた。ところが私の20mぐらい手前でこのお母さんが急に男の子を往復ビンタを数回繰り返したのだ。思わずその親子に走り寄ってしまった。男の子は慣れているのか泣きもせずただ耐えていた。胸が締め付けられこちらが泣いてしまった。
私には子どもが泣いたり悲しんだりするのを堪えることができないのだ。全寮制でお子様を預かっていると色々な背景がある事に気づく。ネグレクトを受けている生徒は結構いる。暴力的な虐待を受けている子も若干いるかもしれない。
思い出されるのがK君である。
彼のお母様は彼が小さい頃に病死されその後お父さんは再婚した。女のお子さんがいる女性と再婚したのだ。K君とこの再婚相手のお子さんがひとつ違いということもあり、特にこのお母さんがK君との距離を気にした。はじめはそれほどでもなかったようだが彼が中学に入学してからは食事はお父さん、お母さんそしてこの女の子の三人でとりK君は自室の前に食事が置かれるという対応を受けた。高校生になった彼と私は出会ったがそのような家庭環境を話してくれた。基本的に自室から出る事は禁止で、実のお父さんもお母さんに対して何も言えない関係だったらしい。
彼はいつも「僕がいると家庭が壊れてお父さんが苦しむんです。早く高校を卒業して新聞配達をして新聞奨学生になりたいんです。」と言っていた。何で子どもが「自分は不要」だなんて思わなくちゃいけないのか、私には理解できない。いつだってそう。いつも子どもが泣かされる。本当に悲しいし涙が出てくる。「そんな事ないんだよ。君が生まれた時、君の家庭がどれだけ明るくなったか。君はみんなから望まれて生まれてきたんだよ。」って全ての子どもに言ってあげたい。育児ノイローゼとか精神疾患とか色々あるのも現実。お母さんだって必死、それも理解しているつもり。でもやはり子どもを苦しめないで欲しい。本当にお願いしたい。虐待を自覚しているなら自分を保護して欲しいと助けを求めて欲しい。もう子どもが苦しむのは耐えられない。